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精神科、心療内科、カウンセリング、精神療法、治療精神医学、夢分析、箱庭療法

院長コラム

薬の減らし方、止め方

 患者さんは、落ち着いてくると「この薬はいつまで飲んでいていいんでしょうか」と言った質問をする方が多いです。これは当然の事と言えるし、むしろしない方がおかしいでしょう。

 

減薬の第一原則(不必要になった時に減薬を考える)

ただ、この減らし方止め方も百人百様で決まったものはありません。そうは言ってもやはり減薬にはそれなりの原則があります。それは前にも述べた「必要な時に」「必要な薬を」「必要な量だけ」服用することの裏返しで、「(薬が)不必要と思われる時」「不必要と思える薬を」「不必要な分だけ(減らしても安全と思える量だけ)」減らしていくということです。

 

第二原則(不必要と思える時の理解)

 不必要と思える時期の充分な理解が必要です。不必要な時とは「心身が安定し、日常生活・対人関係が十分出来、自分の病気の原因がある程度わかり、健康生活を営んで行ける注意も理解していて、もし減薬して調子が悪くなったらそれをすぐ自覚して、治療者と相談するなり、元の薬に戻すなり適切な対応が取れる状態」で或る時です。だから、患者さん自身が自分や自己の病態理解が充分なことが要求されます。

 

第三原則(服用している薬についての患者さんの充分な理解)

 減らしてうまくいく、減らすと大変なことが起きる場合があるので、減らすと目を付けた薬がどんな薬か理解しておく必要があります。

 例えば抗てんかん薬など急に減らすとてんかん発作が起き、脳を更に傷つけることになります。事実、抗てんかん薬の減薬は、てんかん発作が三年以上ないこと、脳波に発作波が五年は出てきていない事などが重要な事項になっています。

 また強力安定剤を服用している方は、幻聴・妄想・思考障害・作為体験・思考障害・精神運動興奮等の統合失調症様の症状を来した人が多いようです。これらの人は、申し訳ないですが客観的に見て自覚に乏しいことが多く、妄想・幻聴などがなくなり、自分の意志・主体性で行動出来たとしても、減薬していけば再び統合失調症症状が現れる可能性があります。そのちょっとした現れに気づいてくれたらいいのですが残念なことにその前段階で気づけず、そのまま幻聴・妄想の中に入り込み、そして自覚ができす、そのまま周りに病院に連れて来られるといったことになりやすいです。

 ただ、治療の中で自覚を深めた方は徐々に減らしていく中で、異常なことに気づきそれを報告出来る力がついているので、減薬に成功するか、一週か一月に一回の割合で服用していても再発がない状態をもたらしてくれています。

 私は、今まで千人以上の統合失調症的な人々の治療に関わりましたが、その中で少なく見積もっても20人以上の方で服薬を止めることが出来、再発の無い状態を続けています。だから、「強力安定剤を一生飲む必要がある」というのは正確ではありません。正しく言うなら「とても大事な薬だから簡単に止めてはいけないが、ある程度の条件が整えば減らしたり止めたりすることは可能である」と言って減らし方を十分に説明して、共通理解に達し、減薬条件が整えば、減薬を実行していきます。

 ある種の医者が一生飲む必要があるというのは、不適切な断薬を防ぐための説明なのでしょうが、正確でありたいものです。

 

第四原則(減薬は一種類ずつで、ゆっくりと)

 減薬は大抵の場合、漸減法が安全です。まず二種類以上の薬を飲んでいる場合は、一種類にターゲットを絞ります。例えば、デパス(エチゾラム)(0.5mg)を一日三錠、パキシルCR(12.5mg)を一日三錠服用している場合を考えます。どちらを減薬目標に選ぶかは悩むところですが、私は薬の特性を話し合って、できるだけ患者さんに決めて貰います。

 減薬はなるべく総量の10%前後(5~20%)1~2カ月様子をみます。例えばパキシルCRを選んだ場合は、一週間で総量21錠ですから、二錠の減薬で例えば水曜と土曜日だけ一週二錠にしてもらいます。そうすると総量で一週19錠になります。こういう形で一カ月様子を見て変わりなければ、今度は四錠減らす事にします。こうやって一年近くでゼロに持っていきます。

 この際、大事なのは通院を怠らない事、十分に状態に注意を払うことで減薬中で調子悪くなれば減薬中止など様々な作戦を考えます。

 パキシルの次はデバスです。これも一年ぐらいかかります。合計二年近くかかりますが、それだけ減薬は慎重な作業なのです。

 そして大事なことは、減薬を目的としても常に患者さんの「最適状態」は何かを考え乍ら治療に当たって行く事です。

 

第五原則(必要あれば無投薬でも治療者との関係維持)

 無投薬になってもカウンセリングや心理療法を続けた方がいいということをわかっていくことが大事です。

精神の薬について(薬を飲む時、減らす時、止める時)

エチゾラム(デパス)を例にして


.薬を服用する時の原則と多様性、使い方の大事さ


 薬(抗不安剤、抗うつ剤等)を服用する時、或いは止めて行く時、不安を感じる患者さんは多いようです。

服用する時は、副作用や依存性の問題、止めて行く時は再発しないかという心配です。

 只、薬や薬の使い方には百種百様と言った具合に複雑なものがあります。

勿論、原則として「必要な時に」「必要な薬を」「必要なだけ」服用するということや、

患者さんと話し合い合意を得てから、といったものがありますが、そうはいっても必要な時、

必要な薬と言う事に関してはまさに千変万化といった多様性があります。


 ここではなるべく正確な理解を伝えるためにデパス(エチゾラム)という薬を取り挙げていきます。

ちなみにデパスとは商品名で、エチゾラムとは薬品の一般名です。

デパスと言う名の由来は、うつ病(デプレッション)を乗り越える(パスする)という

意味があるようで、うまくつけたものです。只、デパスは抗うつ作用だけでなく抗不安作用も強いです。


 さて原則でも述べたように、デパスといった抗不安剤等は必要な時に適剤・適量であれば、

脳の機能は改善しますが不必要な時に大量に飲むと副作用の方が目立ち、脳機能は低下します。

要は薬そのものというより薬の使い方が大事と言う事です。これは薬に限らず何にでも同じことです。


.薬が必要な時


 さて、薬が必要な時とは、単に不安感や憂鬱感、不眠や食欲不振に悩んでいる時だとは限りません。

それではどういう場合かというと「①放っておくとその不安、うつがひどくなり耐え難い気持ちになり、

冷静さを失いそうになる、②不安、うつがひどくなりすぎて、日常生活で必要なこと(就労、勉強、家事、

人間関係等)が出来ないようになる、③逆に必要でないこと、危険な事(繰り返しの強迫行為、独語、

過食・嘔吐、奇異な言動、自傷、自殺企図など)をしそうになる、不眠・不食が強くなり心身が衰弱する、

といった事態になることでしょうか。


 だから、単に不安、抑うつ感だけで服用する必要はありません。

いわば、不安やうつに圧倒されている場合と言えましょう。それと同時に年齢・体重・身心状態も考慮すべきです。


 デパスを服薬すると、7~9割程度に、①心身が楽になる、②睡眠、食欲、体調が改善する、

③不安、苛々、うつ、もやもや、怒り等の不快な感情の緩和、④冷静さ、ゆとり、落ち着きが増す、

⑤気力、意欲、好奇心の増大、といったことが得られるでしょう。


 ちなみに、公的な効能書きには適応として、①神経症における不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害

②うつ病における不安・緊張・睡眠障害、③心身症(高血圧、胃十二指腸潰瘍)における身体症候、

不安・緊張・抑うつ・睡眠障害、④統合失調症における睡眠障害⑤頸椎、腰痛症、筋収縮性頭痛における

不安・緊張・抑うつ、となっています。

 

 

Ⅲ.薬を減らす時、止めて行く時


 服薬の場合もそうですが、減薬、薬終結の場合は、特に患者さんとの話合い・共同作業が必要です。

このことは服薬も減薬も厳密に決定された決まり・法則があるというわけではないということです。

減薬の場合はまず、心身の状況が安定している事、日常生活(仕事、家事等)や対人関係が行われている事、

冷静になり正しいものの見方が出来ている時などが目安になります。


 次にどちらか(治療者、患者さん)が、「薬はいつまで飲むべきか」と言う話題が出て来ると

減薬についての検討に入ります。もっともこれについて言いにくい患者さんもおられますので、

私はいつも診察の終わりに「何か聞いておきたいことはありませんか」と問う事にしています。


 減薬のやり方は、患者さんやその状態に応じて百人百様で一定のものはありません。

少し例を挙げると、①徐々に減らしていき、薬なしで行けて治療終了となる場合、

②一旦終了した後、時々薬を貰いに来る場合、③話合っている内に今のまま(或いは

少しぐらい減らしての)投薬が持続される場合、④減薬中にある程度の処で、

これが一番適量ということで半分ぐらいの量が続く場合、その他多種多様のケースといった場合です。


 大事なのは、薬終了も確かにその一つですが、それよりも患者さん本人が

「健康状態を保ち、安らかで快適な毎日を送ってもらう」工夫をすることです。

薬を過量に不適切に乱用する場合も多いですが、同じぐらいに薬を怖がり過ぎて

適切な薬を飲めずに苦しんでかなり悪化した状態でやってくる患者さんも多いということです。


 しかし、私は後者の方たちを非難する気はありません。

まずは「薬なしで頑張ろう」と決意した事の気持を尊重し、その後、薬について話合い、

患者さんが薬の知識を増やした後で、本人に決断して貰います。それで服薬を選択する方もいますが、

「飲まない」方を選択したからと言って責めたりせず、それでうまく行く事を祈ります。



 

Ⅳ.禁忌、副作用などに対して

 

 今までは、デパスの良い点ばかりを述べておきましたが、怖い面もあります。

 まず、デパスを出さない方がいい場合です。

 

 今の処、禁忌は急性閉塞性隅角緑内障と重症筋無力症で、また重大注意として、

悪性症候群、横紋筋融解症、間質性肺炎などがありません。

これらは滅多に来ませんが(私はデパスで一度も経験がありません)

このようなことは治療者の方が心得ておくべきことです。また肝機能障害や

その他の臓器に対する障害もいつも頭においておく必要があります。

 

(高齢者、副作用)

 

 デパスの副作用としては、眠気、ふらつき、めまい、たちくらみ、

脱力感などが生じる場合(5~10%)があるので、高齢者や身体衰弱者には

投与しないか投与するにしてもごく少量から開始するほうがいいでしょう。

  

 他の副作用としては、時々かまれにしか起こりませんが、循環器系(血圧低下、呼吸抑制等)

呼吸器系(呼吸困難感、鼻閉等)、消化器系(口渇、便秘、悪心等)、皮膚症状(発疹、蕁麻疹等)

泌尿器・生殖器系(頻尿、排尿困難、性機能障害等)などに多種多様の副作用が出る場合ずあります。

これらは他の精神薬に共通して出る事なのでデパスに特徴的ということはありません。


 しかし、治療者の方はこれらを十分押さえておく必要があります。

只、こんなに副作用が多ければ必要なのに服用しにくくなりますが、

殆どの場合は正しく使えばメリットの方が多いです。それから言えば、

副作用を恐れて必要な服用ができないことが最大の副作用となりそうです。

 

 

(薬物依存の場合)

 

 これは、必要な使用量(デパスなら一日3mg以内)を越えて大量に飲み続け、

その結果、不安はへるどころか、常に精神が不安定で抑うつ的で必要なことも出来なくなって、 

しかもそれを自力では減らせない状態です。正しく服用すればこれは避けられますが、

この問題の解決は厄介です。これはまた別の項で取り挙げます。

精神の薬(副作用)

これも沢山あるが、ざっと主なものを挙げる

   錐体外路症状

   アカシジア

   発疹

   排尿障害

   眼の調節障害

   便秘

   悪心、嘔吐

   食欲不振と逆の食欲亢進

   腹部膨満感

   胃部不快感

   下痢・腹痛

   貧血

   白血球減少症

   倦怠感

   口渇

   体重増加

   射精障害

   鼻閉

   脱力感、疲労感

   発汗

   精神神経系の副作用(不眠、眠気、不安、焦燥、痙攣発作、興奮、ふらつ、

過剰鎮静、抑うつ、めまい、頭重、頭痛、ぼんやり、幻覚、妄想、緊張、しびれ感、性欲異常など)


といったこれまた、身体や精神症状のオールスターの登場である。

それから全く逆の反応が起きるのも不思議で、副作用の探究は人間の身心の研究になるだろう。

精神の薬(禁忌、重大副作用、重大注意)

薬を安全に使うため今一度、禁忌や重大注意についてまとめておきます。

まずは抗精神病薬についてです。


   悪性症候群

   麻痺性イレウス

   遅発性ジスキネジア

   抗利尿ホルモン不適合症候群(SIADH)

   肝機能障害、黄疸

   横紋筋融解症

   不整脈、心房細動、心室性期外収縮

   脳血管障害

   高血糖

   糖尿病

   低血糖

   無顆粒球症

   肺塞栓症

   深部静脈血栓症

   持続勃起症

   昏睡状態

   アレルギー、アナフィラキシー

   過敏症

   小児

   高齢者

㉑  妊婦

㉒  認知機能障害

   てんかん

   発作的自殺企図

   尿閉

   閉塞隅角緑内障

   精神錯乱


 まだまだあると思われるが、いずれも身体が弱っていたり、

重大な病気を抱えていたり、体力が弱っている人は、注意が必要だと言う事である。

そもそも上記に挙げた人に何故、抗精神病薬のような劇薬を出すのか疑問に思って普通である。

そんな人は興奮したり体を動かしたり出来にくいはずだからである。

なお、上記の大部分で事故が起こった可能性は1%以下だと思われる。

薬を服用した方がいい時とは?

 精神科・心療内科治療で薬は重要な役割を果たします。特に薬を適切に使うことが大事です。では適切に使うとはどういうことか。それは「必要な時に」「必要な薬を」「必要なだけ」服用するということがポイントです。

 では薬が必要な時とはどんな時か?それは単なる軽い不安・憂鬱・イライラ・怒り・モヤモヤ・身体変調といったことではなく、そうした現象・状態が強く、放って置いたら、日常生活や必要なことが出来なくなり、また冷静な判断力が低下し、不適切な言動をしかねないし、体にもかなりの悪影響が出るといった場合です。ただ、この判断は時として難しい場合があります。

 そんな時、医師は「私なら服薬する」とか「もう少し様子を見る」とかいろいろ意見を言って患者さんの反応を見たり話合ったりして行きます。こんな時「どうしても飲みたくない」という人もいますか、無理強いはしません。勿論、服薬したくない事情を聞き、誤解を解いたり話合ったりはしますが、それでも拒否する方がいます。そんな時は「たしかに服用するのは抵抗があるでしょうね」という様に言って「飲むのはつらいでしょうが、飲まないのも辛いですよ」と言って「いずれにせよ決めるのはあなたですから」と本人に選択してもらうようにします。これによって患者さんの決断力が高まったりしてプラスになるときがありのす。

 勿論、薬の種類も量も時として、患者さんの要望により、幾つかの選択肢を与えて考えて貰ったりします。

 こういうように薬を巡って色々話し合う事で、自分の状態の理解、偏見の是正、薬についての正しい理解、適切な生き方など色んなことに気づいてもらうという間接的薬理効果もあるのです。

うつ病の治療はマイペースの確立と、うつ感情の受け入れ

 うつ病も、根本の原因は思い込みである。鬱病になりやすい人は順調希求(常に調子よく心身が働き活動も出来ている)が強く、ちょっとした不順調(思い通りに行かないこと)に弱い。課長に上がった後、部下が当然指示に従ってきちっと仕事をしてくれるだろうと思いきや期待が裏切られる。それでイライラしながら、部下の遣り損ないの仕事を片付けようとして負担を多くかかえこむ。そのうち、イライラだけでなく、怒りや憂鬱感、不眠と強度の疲労感が出現、食欲不振も出て来る。こんな時は休養するなり、仕事の達成目標を下げるなりの対応をすべきなのにそれが出来ない。

 こうした心身疲労は、当然うつ状態を悪化させ、いわゆる誰が見ても鬱病といった事態になる。当然精神科医の元に行くべきなのに抵抗する人もいる。そこら辺を家族、上司が理解してあげると受診は早い。

 治療の根本はまず休息をとり疲労を回復することだが、本人の心身は騒いでいるので休息が難しい。そんな時には、診断書で休養を取り、抗不安剤や抗うつ剤で、心身を楽にし、冷静さを取り戻してもらう。

 殆どの人はそれでよくなるが、問題は再発の多さである。これに関しては、ゆっくり医師と自分のライフスタイルを振り返りながら、マイペースでいくこと、即ち「自分のしたいこと」「できるここと」「有益なこと」だけをするように共に考えて行く。

 最後に大事なのは、憂鬱感はなくなるものではなく、誰でも多少ともあるもので、多少の抑うつ感情が来ても慌てず、それを持ちながら適切な対応をしていくということである。

ひきこもりの打開策

 ひきこもりは現在だけでなく、昔からよくある事象だったと思います。

ひきこもりの原因は多様で、一つに決定することは難しいです。ひきこもりについては、まず家族が相談に来ることが多いです。その際は事情をよく聴き、家族が何で困っているのかをよく聞き取ることが大事です

 続いて「ひきこもり」に起きている、家庭間・暴力等 できごとが起きてないかどうか考えます。もし、本人を中心としてうまくいっていないなら、その原因・対策を考えますが、基本的には家族が本人と友好を保とうとする姿勢が大事です。

即ち、本人に の『あいさつ』『ほほえみを絶やさない』『軽い』(返事は要求しない)、本人の話を聞くといったことです。

発達障害について

あらゆる人はどこかに未発達な所があり、全ての人は発達障害と言えるでしょう。ただ、発達障害と診断されてしまう人は、この未発達の点が、健常人と言われている人より少し程度が強いので、運悪く、学校や職場で適応できなくなるのです。

 発達障害の方は、特に人とのコミュニケーションが苦手ですが、これらは原因を探るなり、色んな工夫を考える事で、改善はある程度可能です。それを助けるのが、精神科医や心理士といった援助者たちなので、そういう人を大いに利用するといいでしょう。

 また発達障害で仕事が出来ない、いつも上司から叱られているという方も同じで、仕事はコミュニケーションや話合いと同じく、非常に複雑なものです。だから援助者と丹念に、上手く行かない原因・背景・理由を探っていって、出来る事を見つけそれらを積み重ねることで、今の困難から相当救われると思います。

薬の使い方、効かなくてもあきらめないこと、試行錯誤の繰り返しで最適処方へ

 精神に効く薬は、次のような目的で使用されます。それは「心身を楽にする、不安・緊張・憂鬱・イライラ・怒り・不満などを緩和する、冷静さ・ゆとりを助ける、睡眠の改善、気力の増大、気分の改善」といったことです。つまり、少しバランスが崩れていた、神経情報伝達物質の流れを正常化し、皆様の役に立てるということです。

 しかし、薬は100%効くというものでなく、患者の状態に合わせて、適剤・適量を選択する必要があります。この際、医師はなるべく「服用に当たっての必要な事」を伝え、両者合意の上で薬物療法が開始されることが望ましいです。

 その結果、効果が出れば喜んだらいいのですが、残念なことに効果が出なかったり、副作用の方が強かったりすると、その反省を元にまた新たな処方戦略を立て直して、新たな処方を試すことになります。

 こうやって試行錯誤を繰り返し乍ら、正しい処方に到達するのです。

薬の、安全な減らし方、止め方

 状態が落ち着いてくると患者はいつまで薬を飲むのか疑問に思ったり、不安に思ったりする時があります。

 そんな時は直ちに医師にいえば、医師は安全な減薬計画を立ててくれます。

 勿論、薬が無くなった場合の最良の結果、最悪の結果、その中間の段階などいろいろでしょうが、そういうことを話合った後、大抵は漸減作戦、つまりゆっくり薬を減らすのが安全です。

 例えば、一週間に一回、翌日が休日である金曜の夜に休薬日を設け、上手く行くと、次は水曜日も抜くといった具合です。これはノイローゼの型だけではなく、うつ病などの気分障害や統合失調症の方にも通じる戦略です。

 薬は「必要な時に、必要な薬を、必要な量だけ服用する」のが原則で、必要が無くなれば減らしていくのが自然です。

各種の依存症に対して

 精神科に来られる方の中で、依存症の方が増えています。ゲーム依存、スマホ依存、買い物依存、ギャンブル依存、過食発作(過食への依存)、薬物依存、アルコール依存、セックス依存など様々なものがあります。

 これらはなかなか止められず、これで破産したり、体や心をボロボロにしてしまったり、家族に大変な迷惑をかけたり、という痛ましいことが生じます。

 こうした依存症は治らないと思われているようですが、そうではありません。本人、家族、治療者(精神科医や心理士など)が、依存の背景・構造・理由を探っていき、適切な対策、例えば行動記録の活用などを工夫して、すぐには良くならなくてもこれ以上は悪くならないように食い止めることは不可能ではありません。

 そして、少しずつ改善の方向に行く例もあるのであきらめないことが肝心です・

片づけられない人と注意欠陥多動性障害(ADHD)

物を片付けるというのは実に大変なことです。片づけるとは整理する事で何かを捨てる決断と、それを行うだけの持続力・集中力が必要です。これは俗に患者さんと言われる臨床的事態になっている方に特に多いようです。

 

 片づけられない人とADHDが全く同一ということはありませんが、似ている所は沢山あります。

 さて、一番肝心なのは、どうやったらかたづけられるか?ということです。これが出来るとADHDの治療にも役立ちます。

 まず、大事なことは、計画を立てる事です。捨てるもの、異動するもの、整理するものと予め書いておくといいです。

 次に重要なのは一度に全部出来なくてもかまわないと思う事です。一割でも出来たら自分を誉めてあげましょう。

 三番目は、がむしゃらにやらずに疲れたら休むことです。もちろん休んだ後は再開です。「持続する志」がとても貴重です。

 また、家族や友人・知人に頼んで一緒にやれると一層効果があります。

 それから、精神科でストラテラやインチュニブという薬を処方してもらい、気持ちを冷静に楽にし、集中力や自己統制力を応援してもらうのも一つの手です。但し、効果のある薬は副作用も勿論あるし、飲み方を注意していかないと折角の薬も役には立ちません。

 今のは、ほんの一例ですが、実際には「片づけられない症候群」の背後には様々な事情や原因があるので、その辺りを精神科医とじっくり話して見る事が大事でしょう。

 

治療の原則、波長合わせと共同作業

 治療方法や治療経過は非常に多彩である。ただ、いくら多様と言っても、「不易流行」のようなものは底に流れている。それは、治療者と患者を中心とする共同作業ということであり、治療者がなるべく患者の波長に、自分のそれを合わせ乍ら進んで行くということである。又治すのは患者自身であり治療者はそれを邪魔しない時に患者の自己治療を助ける、更に稀に患者の力を引き出す援助者である。いわば、テニスのコーチやピアノの先生のようなものである。そして無理なく最大限引き出せるのが名コーチである。

症状消失より、苦を楽にすること。治る事の苦しさと治療の速度

多くの精神科医は、治療目標を「症状の減少・消失」と考えているかもしれないが、筆者はそうは思っていない。勿論、症状の苦痛が強く、患者の生活能力の妨げになるなら、その苦痛の軽減と能力回復の援助に集中する。

ただ、症状が守りである場合を理解すると同時に、症状はその患者の歴史の総決算でもあるのでそのことも予め心得て置く必要がある。簡単に消失するものではないのである

又、「治る」ことで苦しみが増える事も了解しておくことが大事である。治ることにより現実の負担や課題が増えるし、また気づきによって悪性の自己否定に陥る場合もあるからである。治癒が進んだ時に、うつ病の自殺が増えることを銘記すべきである。

勿論、治らないままでいることも苦痛である。従って治療者は患者とその点を話合いながら、最適の「治る速度」を二人で勘案することが重要である。

真の治療目標(思い通りに行かなくても構わないという覚悟)、症状を受け止める事、患者を傷つけない事こと

・治療目標は「楽になる事」「思い通りに行かない場合に適切に対処できること」「症状・問題点を受け止める力の開発」

そこで、筆者の治療目標であるが、それはひたすら患者が「楽になる」ということを目指すことである。そして「真の楽」とは、「したいこと」「できること」「有益なこと」の発見と実践だと考えている。ただ、患者にとっては、これは難しいことなので、取り急ぎその三つを目標にしたまま、その発見が達成されるまでは「身体だけは大事にする」ということが二次的目標となり、それを目指す。

 「真の楽」達成に関して、今一つの目標は、「人生や物事は思うようにはいかない」と覚悟する事、そして「思うように行かない辛さを抱きながら、その時の最良の対応を発見、実践し、最悪の反応を避ける」ということである。

・症状を受け止めることの大事さ

 この二つと連動するのが、先の症状の問題である。筆者は、症状の完全消失という不可能なものは求めず、可能な範囲での症状苦痛の軽減と、症状を受け止める力(症状にふりまわされず、それを持ちながら適切に行動する)の増大を目指す。

・患者に対する傷は最小限に

 また治療者は患者を誘惑しているだけではなく傷つけていることにも注意を払っておくべきである。注意しておくと傷は最小限で抑えられる。

 以上は基本中の基本であるが、基本程難しいものはないので、常にその点検が大事である。

診療の実際、聞く事の大事さ(何故、この時期に、この自分に、このような症状が出てきたかの解明)

【治療の実際】

a.診療で気を付けている点(詳しい正確な把握、身体への関心、治療歴の重要さ)¹

初診は決定的に重要である。よく「入り口か出口を決定する」「最初のボタンの掛け違いが後迄響く」と言われるのもその所以である。だからといって、あまり気負わずに、「なるべく、患者の言う事を正確に素直に聞きとろう」「患者の物語を少しでも読み取ろう」「何故この時期に、この患者診察で丁寧に、話を聞くのは勿論である。特に、「何故この時期に、何故この自分に、何故このような症状・問題点が出現したのかということの理解に努めよう」とするが肝要である。そのような気持ちでおれば、素直にそれが治療者の態度に現れ、患者は「私は受け入れられている」「少なくとも拒否はされていない」という印象を持てるようである。

話を聴く中で、特に注意しているのは現症病歴治療歴成育歴家族歴現在の対人関係、一日の生活の様子といった点であるが、その中でも、重大なのは身体状態の把握である。時として幻聴やうつ症状の背後に脳腫瘍が見つかり糖尿病高血圧肝炎などが発見されることも多い。精身療法(筆者の造語)を考えておきたい。

又、治療歴も重要である。筆者の元に来院する患者は紹介患者が多く89割はどこかで治療を受けた経験があるこの点に関してそれまでの治療内容や患者の印象を聞いておくとその患者の問題点や治療困難点が浮き彫りになり患者の核心を掴みやすい。また、患者の心配(前治療者の下での傷つき・不快体験が再現されないか等)を聞いておくと、患者の安心感は増え、よりスムーズに治療という共同作業に入りやすい。

その後、主訴(患者の望む事、治療者に聞きたい事、してもらいたいこと等)を聞きだし、治療目標が設定され、そこへ到達するためにした方がいいこと、しない方がいい事の共同探究がなされる。ここでも大事なのは、患者と波長を合わせながら、お互い確認と同意を共有しながら進んで行く事である。しかし、治療目標を明確にすることは必ずしも簡単ではない。その場合は治療目標を見つけることを目標にすればいいであろう。

又、場合によっては治療目標など定めない方がいい時もあることをわかっておきたい。

治療とは治療困難店の発見と解決が基本

治療とは「治療困難点の探究と解決」²

治療は初めから別れまで、困難の診段階から、治療の中期、終結に至るまで、治療は困難の連続である。例えば、治療意欲の乏しさ、現実認識の無さ・歪み、患者本人が通院困難、治療希望が非現実的・非合理、話がまとまりにくい、緘黙とその反対の超多弁、質問に答えない・逸らす、対話困難・相互性の無さ、治療者への非難、脅迫、暴言、暴力、事務スタッフへの無理難題・嫌がらせ、様々な行動化、無関係な話ばかりする、自分の意見が言えない、質問だけで終始、自傷、希死念慮、自殺企図、絶望感・虚無感、現実や人間関係に入れない、ルール・約束が守れない、犯罪傾向、薬物依存、嘘が多い、責任感の無さ、治療者へのしがみつき(悪性の依存・転移)、認知の歪み、重度の健忘・解離、行動のコントロールの無さ、解説ばかりで実践が無い、などである。

上記の治療困難点には絶えず注意を払い、少しでもその予兆に気づいたら、すぐにその対策を考えたり実践する方がいい。というのは、こうした治療を妨害したり難しくしたりするこの「治療困難点」こそ、患者の問題点や病理の核心であり、治療の展開点になることが多いからであるとが多いからである。

それ故、治療とは、治療困難点の発見とその対策探求と言っていい。

不安障害、パニック障害、社会不安障害に対して

 不安は嫌なもので、誰もがその消失を願うが、不安は人間の条件でもあるので消すことは難しい。

 しかし、不安を軽くし、楽にすることは可能である。そのための第一は、不安は人間である以上、あっても構わないと覚悟することである。不安を減らそうとすると、不安に注目することになり、却って不安はひどくなると。

 第二は不安の原因を探し出し、それが少しは解決可能なもの(余計な負担はしょい込まない、他者との人間関係の回復、懸案を片付ける、規則正しい生活等)であれば、それを考える。

 第三に減らせる不安と減らせない不安を区別する知恵をつけることである。

 第四は減らせない不安の場合はそれを持ちながら、自分の「したいこと」「できること」「有益な事」に集中することである。

 第五は、冷静になり、心身を楽にするために必要であれば、適剤適量をよくわきまえている精神科医に処方してもらうことである。

 ちょっとした不安もパニックも対人不安も根は同じであり、不安との付き合い方が大事なのである。

心の病の原因は「思い違い」にある

 心の病の原因は無数に有るが、その中で最大のものは「思い込み」「思い違い」である。いつも目にする不安障害、パニック障害でも、ちょっとした不安(死ぬのでは、息が止まるのでは、癌になったのでは、等々)を、そうであるかのごとくに思い込み、不安が不安を呼び、脳と心と体は冷静さを失ってしまう。そして日中は思ったことが出来ず、夜は不眠に苦しむのである。

 ただ、悲しい事にまわりがいくら説明しても、例えば「こんな不安ぐらい誰でもありますよ。不安がある方が注意して行動できますよ」「息は止まりません。体は自然と呼吸を欲するものです」「これだけ検査をして正常ですから癌の筈はありません」「無理に眠ろうとせず、目を閉じて横になっているだけでかなりの程度の休息や睡眠になりますよ」と言ったとしても無駄である。

 彼らは不安に駆られて、無暗に無駄に動き回り、また「息が止まる不安」に駆られて、息を吸おう吸おうとして却って過呼吸発作を引き起こすのである。夜は寝床に入る前から「眠れるかどうか」不安になり、もう寝床に着く頃には最高の興奮状態になっており、じっとしておられなくなる。そして日中は仕事や用事や人と会う事が出来なくなる。

 概して。心の病は、必要で有益なことが出来なくなり、不必要で嫌なことを増やしてしまうのである。

『治療者ユングから学んだこと』発刊(朱鷺書房)(2020.2.1)

 上記のようにようやくユンク心理学の本が書けました。ユングについては50年近く前から親しんできたのですが、なかなか難解でよくわかりませんでした。ただ、文学的、象徴的、絵画的、詩的なイメージが豊富で、その魅力に取りつかれて、ここまでやってきました。

 しかし、20年前頃より、「自分なりのユング」、特に治療者としてのユングに迫りたいと思い、対話形式でまとめました。おかげで、夢、象徴、イメージが、如何に人間を動かすかということを実感すると共に元型体験の重要さ凄さを身に染みてかんじさせられました。

 そうしたことを具体的に理解し、また読者の方にも分かりやすくするために、自験例10例を加えた30の事例を紹介すると共に、自分なりの解説も加えました。

 更には、ユングの影とも言える、シュピールライン、トニー・ウォルフ、更にはナチスとの関係についても触れました。

 ユングは大変魅力的ですが、危険な面もあります。こうしたことを踏まえ、なるべくユング心理学が皆のものに、更には治療や「困難を受け止める力の開発」に役立てて頂ければこれに過ぎ喜びはありません。

 また感想を聞かせてください。

夢コラム

3月に刊行予定の「心の援助に活かす『夢』の基礎知識」の校正をしています。夢がわかりにくく、思い出しにくいのは、心的内容や意味の圧縮・移動・象徴化・視覚化・二次加工(ストーリー仕立て)といった、夢作業の結果だと言えます。

 

ただ、こうした作業は、夢に限らす、日常の会話や伝達でも使われています。言いにくいことや伝えるのをためらわれる場合に、ぼかしたような言い方、比喩・皮肉・例え話などのような表現、カモフラージュした言い方、幾様にもとれるメッセージなどです。これらは人間関係を円滑にしたり、深みをもたらすような様々な利点がありますが、一方で「何を言いたいのかさっぱり分からない」ということにもなります。 

 

その意味で、夢は「心の大いなる秘密」と言えるかもしれません。だから、夢も秘密と同様、「よくそれ(夢・秘密)に熱心に耳を傾け、理解してくれる人」「それを誰にも明かさないで秘密を守ってくれる人」「打ち明けた内容を、その人(夢見手、秘密の当事者)に有益になるよう使ってくれる人」に限って、話すことが無難でしょう。

 

皆さんの初夢はいかがでしたか。

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